家族

電車の網棚への忘れ物は家族への愛を置き去りにしたということ

電車の網棚に忘れ物をした日

電車の網棚に忘れ物をした。

不覚である。

大したものではなく金銭的な損失はないが、心理的な損失は大きい。

いや。本当は「大したもの」だったかもしれない。

外出先のお土産で買った、Manneken(マネケン)のクリームワッフル(6コ入りセット)。妻と娘が大好きで、彼女たちの笑顔を見たくて、帰り道のお店で買った。

だが、あろうことか、最寄り駅に到着した電車の網棚に忘れ、そのまま自宅へ戻ってしまったのである。

しかも、気づいたのは自宅に到着してから。

どうして僕は、もっと早くに気づかなかったのか?

電車を降りた直後とか、駅の中を歩いているときとか、駅から自宅までのバスに乗る前とか……

いや。せめてバスの中で気づいていれば、ここまで自分を責めなかったかもしれない。

マネケンのクリームワッフルを置き忘れたこと。それは妻と娘の笑顔を置き忘れてしまったことと同義だからだ。

「僕はなんということをしてしまったのだろうか!」

だが、気づいたときには、時すでに遅し。

急いで駅の「忘れ物センター」に電話をかけるも、受付時間は20時まで。時計の針は「20時17分」を指しており、絶妙なタイミングで間に合わなかったのだ。

「なぜもっと早く気づかなかったのか?!」

心の中で強く叫んだ。

もっと早くに気づいて電話をかけていれば、網棚のクリームワッフルを確保しておいてもらえたのに、

そこから急いで駅へ引き返して、クリームワッフルを取り戻すことができたかもしれないのに、

あのマネケン独特の小便小僧のマークとともに、妻の娘の笑顔を取り戻せたかもしれないのに!!

……あれ? でも、小便小僧のマークのことを思い出すと、ちょっと食欲が削がれてしまうぞ???

いやいや。そういうことではない。

今は、そんな小さいことに思考を奪われている場合ではないのだ。

重要なのは、僕が妻と娘のために買ったお土産を単純なうっかりミスで網棚に忘れてしまったことである。

小便小僧は関係ない。断じて関係ないのだ。

ベルギーの観光名所とされつつも、実際に行ってみたら「しょぼっ!」と観光客を思われてしまう『世界三大ガッカリ』の一つだとしても、今ここでは関係ないのだ。

なぜマネケンさんが小便小僧をシンボルマークに取り入れているのか、食べ物なのにどうして排泄を想起させるシンボルなのか、単純に「ベルギー」ということなのか、をグルグルと考えてしまうが、今はそんなグルグルは要らない。

そう。「一人でグルグル考えるのはやめよう!」と、自らのブログで言っているではないか!!

耳に当てた受話器では未だにコール音が鳴り続けている。「忘れ物センター」はもう応答しないらしい。

「おのれ! ちょっとくらい時間オーバーしたって、電話くらい出てくれてもいいじゃん!」

と心の中で叫んだが、営業時間は営業時間。決まりは決まりである。

ここでバタバタしても、仕方がない。

「ならば、いっそのこと直接 駅へ行って尋ねようか?」

そう考えたが、やめた。

なぜなら「営業時間が20時まで」ということであれば、行ったところで門前払いになる可能性の方が高いからだ。

そもそも、網棚に残したクリームワッフルが駅に確保されているかも怪しい。もしかしたら、そのまま電車に乗ってどこかを走っているかもしれない。

いや。あの網棚に乗ったまま、誰にも手を付けられず、夜の街をさまよっている可能性の方が高い。

哀れ……クリームワッフル。

マネケンの店員さんが気を遣ってくれて、「2時間までの保冷剤を入れておきます」としてくれたけれど、その2時間もまもなく経過してしまうだろう。

クリームワッフルの名の通り、生クリームが挟まれたワッフルなので、「本日中にお召し上がりください」のシールが貼られていたはずだが、このままでは残り3時間半ほどで賞味期限も切れてしまう。

普段であれば「冷蔵庫に入れていれば、いっか!」と、自己責任の名のもと翌日でも食べてしまう我が家だが、このまま電車に揺られて時間が経過したクリームワッフルを明日以降に確保して食べる、という勇気はない。

「しかたがない。ここはもうあきらめるしか……」

そう呟いて、僕は受話器を置いた。

もう一度、「忘れ物センター」のホームページを見てみると、「食品は廃棄する場合あります」とある。

ここは苦渋の選択だが、このまま駅員さんに廃棄してもらうことを期待するしかあるまい。

こちらのミスであるにも関わらず、こんな手間を取らせてしまうこと……そして、こちらからしっかりと連絡とお願いを伝えられないのは歯がゆいが、「忘れ物センター」の受付時間が過ぎてしまったのあれば、こうするしかないのだ。

「ごめんなさい、駅員さん」

「ごめんなさい、クリームワッフル」

そして何より……

「ごめんなさい、妻と娘よ」

電話から離れ、妻と娘がいる部屋に戻った僕は、素直にそう告げた。

「ごめんなさい。お土産にワッフル買ったけど、電車の網棚に忘れちゃった」

素直に謝った。

すると、4才の誕生日を迎えたばかりの娘が言った。

「なんで忘れたのー?」

子どもというのは、残酷すぎるほどに無邪気だ。その問いは、傷に塩を塗りつけるように、僕の心に痛く響く。

「え、えっと……ボーーーーっとしてた、から?」

そうだ。そういえば、僕はどうして忘れてしまったのだろう?

いつもはこんな忘れ物なんてしないはずだ。

以前に電車の網棚に忘れ物をしたのは、高校時代に部活用のカバンを忘れたときくらいだ。あのときは、忘れ物センターではなく、一緒に乗っていた友達が親切にも確保しておいてくれた。

きっと、その部活が始まったばかりで、頭も心も体もいっぱいいっぱいになっていたからだろう。

「あ。そういえば、今日も色々といっぱいいっぱいだった」

そう。その日は新たな出会いがあったり、その人達と食事したり、色々と話したりたくさんの新しい学びがあったり……そんな日だった。

だから、僕の頭も心も体もいっぱいいっぱいだったのだ。

高校時代に新しい部活を始めた頃と同じように、キャパオーバーになっていたのだ。

それが、あの小便小僧……いや、マネケンのクリームワッフルを置き去りにしてしまった原因であろう。

「う、うん……お父さん、電車降りるときにボーッとしちゃってたみたい」

改めて、素直に娘に告げた。

だが、

「なんでーーーーー???」

畳み掛けるように、娘が返してきた。

容赦ない。

幼児って容赦ない!!

「ごめんなさい。本当にごめんなさい」

平謝りするしかなかった。

ただ、たしかなことがある。

いくら新しい出会いや学びがあったからといって、家族のことをないがしろにしてはいけないということだ。

これから自分自身を成長させ、変化を遂げていきたいと考えていても、家族はすべての土台である。

それを忘れてしまってはいけない。

今回、「マネケンのクリームワッフルを電車の網棚に忘れる」という大失態を犯した僕は、そのことを深く学んだ。

妻と娘には、本当に申し訳ない。

やはり、彼女たちを第一に、これからの人生を歩んでいこうと思うのだ。

だから、二度とこんなことはしない。

いくら『世界三大ガッカリ』といっても小便小僧を忘れたりはしない。

妻と娘が大好きなクリームワッフルを、決して置き忘れたりしない!

そう固く心に誓った。

外出先で買った家族へのお土産は、家族への愛の証なのだから。

 

……と、そんなわけで、妻と娘よ。

今日の晩ごはんは僕が作ろうと思うのですが、何が食べたいですか?

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つじばやし@農マドワーカー
つじばやし@農マドワーカー
「ノマドワーカー」ならぬ「農マドワーカー」です。 地元の田んぼで無農薬のお米づくりをしながら、IT関連のお仕事をしています。 ブログは毎日更新しているので、よかったらまた遊びに来て下さいね!

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