夫婦関係

妻の緑のコート

妻が緑のコートを売りました。それは僕の好きなコートで……

その妻のコートは、僕にとって思い出のコートでした。

でも、そのコートを妻は手放すことにしたようです。

なので、僕は少し寂しい気持ちになりました。

ただ、その気持ちを、僕は素直に言えなかったのです……。

 

 

最近、妻が自分の持ち物を断捨離しています。

理由はわかりませんが、たくさん持っていた本を一気に売ったりしています。

そして昨日は洋服のターンだったらしく、たくさん持っていた服を一気にリサイクルショップに持ち込んでいました。

僕も少しだけ手伝ったのですが、その中に一着のコートがありました。

以前に妻がよく着ていて、僕もよく見ていたものです。

6年ほど前に撮った思い出の写真です

もう6年ほど前ですが、まだ子どもが生まれる前、二人でデートしたときの写真です。

なので、この緑のコートには個人的に思い入れがあったというか……「妻に似合うなー」と思っていたものでした。

「そうかー。これも売っちゃうのかー」

と、車に運び込むときに思ったのですが、あくまでも妻の持ち物ですし、それをとやかく言う資格はありません。

ちょっぴり寂しい気持ちもありつつ、

「これで妻の気持ちがスッキリして、部屋の状態が良くなるなら」

と、何も言わずに、リサイクルショップへ出発する妻を見送りました。

 

で。その日の晩のことです。

 

晩御飯を一緒に食べながら、

「洋服を売りに出せてよかったー」
「そんなに高くは買ってもらえなかったけど、スッキリした♪」

と、妻はうれしそうに話していました。

僕も「よかったねー」と応えつつ、ふと

「そういえば、あの緑のコートも売っちゃったんだね」

と言いました。

自分としてはすごく何気なく、単に事実を告げただけのつもりだったのですが、その言葉を聞いた瞬間、妻の表情が固まりました。

「え? ダメだった……?」

さっきまでの陽気な口調が一転。すごく沈んだ声で返事が返ってきたのです。

「あ、しまった!」と思う間も無く、妻が続けます。

「あのコートお気に入りだった?」
「じゃあ、売らない方がよかったかな?」

……と。

「いやいや。自分で売りたいと思ったんだったら、それでいいじゃん!」
「運び出すときに僕も気づいてたけど、何も言わなかったんだし」
「これから新しいので似合うコートいっぱいあるでしょ」

僕も慌てて言葉を続けますが、どうやら手遅れだったようで、

「そうかー。ダンナがそんなに気に入ってくれてるんなら、残しておけばよかった」

と、沈んだ声で言ったのでした。
(妻は僕のことを名前ではなく「ダンナ」と呼びます)

「あ、いや。僕の方こそ ごめん」
「こんなことなら、運び出すときに ちゃんと言えばよかったね……」

と、僕も自分の気持ちを伝えなかったことを後悔しました。

たしかに妻のものは妻自身がどうするかを判断すべきですが、僕にとっても愛着のあるものなら、そのことを素直に伝えるべきだったのです。

そして何より、妻が意外にも「ダンナからどう見られているか?」を気にしてくれていることを知ることができました。

「そうか……僕のことを大事に想ってくれているんだな」

と感謝しながら、その晩は眠りにつきました。

ただ、緑のコートが無くなった寂しさと、自分の気持ちを伝えなかった後悔は、胸から消えないまま……。

 

翌日は、妻も僕も何もなかったかのように一日を始めました。

娘を起こし、一緒に朝ごはんを食べ、娘を幼稚園へ送り出し、そして二人とも それぞれに用事があったので、それぞれに外出しました。

僕はお昼過ぎに用事を終えて帰宅したのですが、妻は その3時間ほど後に帰って来ました。

そして、迎えた僕に対して こう言いました。

「ごめん。昨日のコート、無かった……」

……と。

「え? お店に探しに行ってたの?!」

僕は驚きました。

そうなんです。妻は、昨日 緑のコートを売ったリサイクルショップへ今日も行き、買い戻せないかとお店の中を探し回っていたのです。

「店員さんに聞いたり、コート売り場を結構探したんだけど、見つからなかったんだ……」
「もう売れちゃったみたい……」

と、とても悲しそうに話してくれました。

「そっか……。僕のために、探してくれたんだね」

と嬉しい気持ちになりつつ、でもコートが見つからなかったことは残念で……何より目の前で落ち込む妻を見るのが苦しかったです。

「だから、ごめんなさい……。
あのコートは思い出の中だけで残しておいてください」

そう最後に妻は言ったのでした。

  • 妻が僕のコートに対する気持ちを汲み取ってくれたこと
  • その気持ちに応えようと、コートを探しに行ってくれたこと

どちらも感謝ばかりで、言葉にできません。

妻の気持ちと行動が本当にうれしかったし、“ありがたい”以外の何物でもありませんでした。

けれど、それゆえに緑のコートを見つけらくて落ち込む妻を見るのが苦しかったですし、

「運び出すときに、なぜ僕は自分の気持ちを言葉にしなかったんだろう?」

と改めて後悔しました。

「たとえ相手が決めたことであっても、自分の気持ちはその場でちゃんと言わないといけない」

そう気づいたのです。

 

ただ、僕にはひとつ、妻に喜んでもらえるかもしれないアイディアがありました。

なので、

「あのー。もしよかったら、見てもらいたいものがあるんだけど……」

と落ち込む妻に、思い切って切り出してみました。

「?」

「えっと……実は今日、ふらっと立ち寄ったお店で『コレ、ゆきちゃんに似合いそう!』と思った服があったから、買ってきたんだ」

「???」

「持ってくるから、ちょっと待ってて」

そう告げると、僕は今日出かけた先で買った妻へのプレゼントを自分の部屋まで取りに行きました。

そしてしばらくして、妻のもとへ戻り、渡しました。

ちょっと不恰好なのは自分で包んだからです

かなり不恰好な包装です……。それもそのはず、これは自分でラッピングしたものですから。

というのも、僕が その服を見つけたのは とあるリサイクルショップで、プレゼント用の包装は頼めなかったのです。

ですので、その服を買った後で別のお店でラッピングバッグを買い、自分の手で包装しました。

けれど、こんな不恰好なプレゼントであっても、「妻に着て欲しいなー」と思ったものなので、思い切って手渡しました。

すると……

「あーーーー!」

妻が叫びました。

「あったーーー!!」

驚きと喜びが入り混じった声でした。

妻が袋の中から取り出したのは……

袋の中から出て来たのは緑のコートでした

緑のコートでした。

妻はすごくすごく喜んでくれて、

「そうかー。だから、なかったのかー!」
「いつ行ったのーーー?!」

と大きな声で聞いて来ます。

「えっと……朝 出かけたすぐあと」
「用事に行く途中で、ふらっと寄った」

と、僕は“とある”リサイクルショップへ行った経緯を話しました。

「うわーー! 戻ってきたーーー!」

と妻は歓喜しっぱなしです。

その姿を見て、僕もすごくすごく嬉しくなりました。

たしかに そのコートは妻が昨日 売ったものかもしれない。

けれど、あくまでも今日の僕が「買いたい!」となったコートなんです。

僕が妻に贈りたくなって、今日 新しくお店で買ったコートなんです。

だから、6年前から持っていた“思い出のコート”と物理的には同じモノだったとしても、そこに新しい“二人の物語”が加わったことによって、全く新しいコートになったのでした。

そのことも妻は受け取ってくれたみたいで、僕はとても幸せな気持ちになりました。

 

ぶっちゃけ、一度リサイクルショップに売ったものを買い戻すなんて、バカなことだと思います。

それを偶然にも、二人して買いに行こうとしていたなんて、さらにバカバカしいかもしれません。

しかも、先に旦那が買っていて、それを知らずに探しに行った妻が落ち込んで、その後で旦那がサプライズプレゼントしたなんて、単なる茶番でしょう。

けれど、僕たち二人にとっては、かけがえのない想い出になりました。

 

6年前のコートの想い出に、また一つ新しい想い出が増えました。

 

まだまだ夫婦としては至らないことばかりですが、これからも二人で色んな物語や想い出を紡いでいけたらと思います。

 

6年前の自分たちよりも

 

昔の自分たちよりも、もっと幸せな夫婦であるために。

ABOUT ME
つじばやし@農マドワーカー
つじばやし@農マドワーカー
「ノマドワーカー」ならぬ「農マドワーカー」です。 地元の田んぼで無農薬のお米づくりをしながら、IT関連のお仕事をしています。 ブログは毎日更新しているので、よかったらまた遊びに来て下さいね!

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